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人気の名簿 販売

見えるロスは、仕入れたものが売れない時に発生し、見えないロスは売れたであろうものを発注していない、あるいは発注しても店頭に届かない、という時に発生する。
実は80年代までは、この2つのロスに対して組織的な仕掛けを作って対応する必要性が叫ばれることはなかった。 それは、そのような仕掛けを作らなくても目標となる数字は達成できた、つまり機会ロスに気づく必要もなかったし、売れなかった商品(在庫ロス)も返品できたからである。

一方、こうした負の遺産に惑わされることなく、成長の波をうまく捉えた流通企業も存在する。 それらの企業が実践している事業運営の仕組みが、本書で解説するディマンド・チェーン経営で取引制度の革新とは、返品制に挑戦することを指し、営業の革新とは、売場担当者任せの成果型営業管理が持つ問題を克服することを意味する。
そしてこれら2つの革新を実現するためにヒト(組織)、情報(コミュニケーション)、モノ(物流)の3つの側面でも革新を行う。 ディマンド・チェーン経営はこれら5つの革新を構成要素とするものである。
「返品依存」「売場担当者依存」からの脱却2つのロスの発生を防ぐには、いくつかの対策が必要になる。 まず、第一に、売場に死に筋が並ばないようにしなければならない。
そこでは、一品一品、その商品が売れる可能性を吟味して発注し、死に筋が売れ筋の売場スペースを奪うことがないようにする必要がある。 第2は、個店の状況に合わせたきめ細かな営業活動である。
個々の店の立地環境や客層などに応じた品揃えや90年代に目立った成長を遂げた流通企業は、売れ残りのロスと売り逃しのロスに対応するため、5つの側面で革新を行った。 その側面とは、取引制度、営業、組織、コミュニケーション、販売方法を採用する必要がある。
第3に、優良店のノウハウを組織全体で共有して、活用できるような仕組みが挙げられる。 優れた販売方法や成功事例を一部の店舗だけに留めておくことなく、それらを組織全体で活用できるようにする。
そして最後に、営業活動を機動的に変更・修正できるようにする必要がある。 市場の動きに遅れることなく営業活動を変更する、あるいは、不具合のある部分は迅速に修正する。
以上は、流通企業が2つのロスの発生を防ぐのに必要なことであるが、実は、それらを行うことは、多くの流通企業がいまもって抜け出せずにいる「返品体質」と「売場担当者任せの営業」から抜け出すことを意味する。 それを、90年代に成長を見せた流通企業はまず、ディマンド・チェーン経営を実践している企業は返品制への挑戦を行った。

つまり、取引制度における革新を行った。 従来の百貨店や総合スーパーは日本の商慣行である返品制を温存する形で成長してきた。
百貨店やスーパーの販売力に注目したメーカーは、返品の受け入れを条件にその店頭を自分の商品で埋めようとした。 機会損失と在庫ロスの発生を恐れる流通企業側にとって、その提案はメリットのあるものであり、実際に受け入れられてきた。
しかし、返品制への依存は、バイヤーの商品選択や市場予測にスキをつくる。 その結果、売場の一部に本来あるべきでない死に筋商品が置かれることになる。
死に筋商品の存在は、それ自体が在庫としてロスを発生させると同時に売れ筋商品用のスペースを占拠し、売り逃しのロスも発生させる。 さらに死に筋商品は川上に返品されるが、それに伴う作業もまた付加的コストとなって流通企業にのしかかることになる。
他方、ディマンド・チェーン経営を実践している流通企業は、次の2つの方法で返品制に挑戦している。 一つは、川上への返品を取りやめること、そして2つ目は川下からの返品は引き取ることを原則とすることである。
ディマンド・チェーン経営では、単に、商品を川上に返品しない積極的に行ってきたのである。 2つ目の革新は営業革新である。
この場合、店舗での発注作業を含めた売り方革新を意味する。 先に紹介したように、それまでの多くの流通企業における営業は、店長が自身の才覚によって目標売上を達成するスタイルをとっていた。
そこで各売場担当者や店長がどのような工夫や努力をして経営数字を上げているかについてはブラック・ボックスになっていて、本部がその中身を明らかにする努力を行ってこなかった。 そのため、優秀な成績をあげる店があっても、そこでのノウハウが他店に移転されることはないし、不振店の再生を試みようとしても、どの部分に不具合があるのか発見するのが難しかった。

また、それまでの優良店についても、いつまでも時代の要だけでなく、川下からの返品を受け入れる。 川上への無返品と川下からの返品をセットで行うことで組織の能力を高めることができる。
その結果、死に筋商品が売場から排除され、売れる可能性の高い商品が店頭に並ぶようになる。 ディマンド・チェーン経営を実践している企業の経営者達が強調する、その効果として、低価格、買い取り取引先の資源吸引、自社の能力増強の3つを挙げることができる。
つまり、返品制に挑戦することで、低価格仕入れが実現し、取引先の資源も優先的に自社に配分されるようになり、マーチャンダイジングに関わる担当者の能力や商品の性能が向上するようになるのである。 ディマンド・チェーン経営では、以上のような形で返品制と成果型営業管理が持つ問題に挑戦してきた。
しかし、それらの問題を本当の意味で克服するには、取引制度と営業面の革新だけでは不十分である。 それらの革新を支える組織、コミュニケーション、物流面での革新が伴って初めてそれらの問題は克服されるのである。
まず、ディマンド・チェーン経営では分業の形が変わる。 組織の革新である。
従来のチェーン・オペレーションでは、本部で商品政策と営業政策を考えるのはバイヤーの仕事であった。 仕入請に合った営業活動を続けられるかどうかはわからない。
市場が変化しても絶えずそれに合った形で営業活動を行える仕組みは、多くの流通企業にはなかったのである。 それに対して、ディマンド・チェーン経営では、営業活動のプロセスをできるだけ透明化する努力を行っている。
工夫の中身に差はあっても、個店の状況を十分把握している。 また、その中で各店がどのような時期にどのような商品を、どのような発注・販売の仕方をするかについて、組織的に明確化する努力を行っている。

そして、各店での成功談や失敗談は、その透明化されたプロセスの中で評価きれ、組み入れられたり、改良されるような仕組みになっている。 このことで、ノウハウの組織的共有と営業活動の改善を可能にし、そのスピードも上げることができるのである。
商品の企画・選択から各店の品揃えと配分量の決定までバイヤー一人が行っていた。 80年代までならこのような体制で臨んでも、大きな問題はなかった。
在庫は値引きすればある程度処理できたし、目標の数値さえクリアすれば、最後に在庫は返品すればよかったからである。 しかし、すでに述べた通り、90年代はそのような対応が許されなくなった。
売れ残りのロスも品切れのロスもできるだけ極小化する、細やかな商品・営業政策が必要になったのである。 そのような状況では、バイヤー一人がすべての業務をこなすことが物理的に困難になる。

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